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しかし、クスクスと笑う彼女のように、僕はとても楽しめない。
それどころか、この日、一日、踊っていた僕の心にモヤモヤとした影が
黒く落ちた。
「ナッちゃん」
そして「ん?」と、いつものように僕を見上げてくる彼女を目に、
僕は、すごく切なくなった。
「ギュッてしたい」
それには、彼女が小さく目を見開く。
「えっ? こ、ここで?」
たしかにここは、フォルトゥーナ本社から離れてもいない上に、
みんなが駅へと向かう大きな歩道のど真ん中。
それでも僕は、すごく堪らなく彼女を抱きしめたかった。
「うん」
彼女の温もりは僕だけのものだと、確かめたかった。
大好きな彼女の匂いで満たされて、彼女が僕だけの傍にいてくれると
安心したかった。
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