第5章 モテ期到来?

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しかし、クスクスと笑う彼女のように、僕はとても楽しめない。 それどころか、この日、一日、踊っていた僕の心にモヤモヤとした影が 黒く落ちた。 「ナッちゃん」 そして「ん?」と、いつものように僕を見上げてくる彼女を目に、 僕は、すごく切なくなった。 「ギュッてしたい」 それには、彼女が小さく目を見開く。 「えっ? こ、ここで?」 たしかにここは、フォルトゥーナ本社から離れてもいない上に、 みんなが駅へと向かう大きな歩道のど真ん中。 それでも僕は、すごく堪らなく彼女を抱きしめたかった。 「うん」 彼女の温もりは僕だけのものだと、確かめたかった。 大好きな彼女の匂いで満たされて、彼女が僕だけの傍にいてくれると 安心したかった。
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