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だが一方で、子供っぽい事を言っているという自覚はあり、
さすがに視線は上げられない。
すると、俯いたままの僕の手を、少しだけ躊躇った彼女がそっと引いた。
「じゃあ、こっち」
僕は、引かれるままに彼女に付いて行くと、細い脇道から裏の通りへと
連れて行かれた。
そして、
「ここなら平気かな」
だが、多少は減っても、ここも決して人目がないわけではない。
それでも、笑顔で言ってくれた彼女を僕はギュッと抱きしめた。
それと同時に、ふんわりと淡く香水の香りを纏った彼女の匂いが
僕の鼻孔を抜けていく。
「ナッちゃん……」
なけなしの理性が、口を突いて出そうになった「大好き」という言葉を
かろうじて呑み込ませた。
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