爪痕

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「……な…い」 何か言ったけど聞き取れなかった。 「えっ?」 もう一度聞き直そうとした時、パッと一輝と目が合い、咄嗟に右手を庇った。 一輝は私を押すように中に入ってきて部屋の壁に追いやられた。 「俺は絶対認めない!」 両肩を掴まれて、壁に押し付けられる。 「なんでだよ!なんでそうなるんだよ!」 何度も何度も壁にぶつけるように揺さぶる。 「…一輝!痛い!」 それでも一輝は止めなかった。 私は必死で一輝から離れようと座り込む。 それでも一輝は離さない。 「俺から離れられるのかよ!!!」 床に押し倒され、額を強く打つ。 「もう一緒にいれない!!!」 私はそう叫んだ。 「なんでだよ!この前は逃げろって言っても!捨てろって言っても!どこにも行かなかっただろ!?」 必死で抵抗して、一輝から逃げて部屋の奥に逃げた。 「一輝…こんなことされたら…無理だから…」 荒い息で訴えた。 一輝は立ち上がってこちらを見る。 「なんでだよ、結…」 一輝の目線が違う方を見る。 テーブルにある鈴木チーフから頂いたペン。 「誰からだ?」 一輝はペンを手に取る。
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