まさかの転職

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「私だけの気持ちじゃどうにもなりませんから」 少しムッとして答えたと思う。 片付けの手を止めずに、椅子を壁際に移動させる。 「君を7年も縛り付けれる男って、すごく魅力的な人なんだね」 そう言われて、一輝の顔が頭に浮かんだ。 魅力的? 鈴木チーフは机を片付け終えて、椅子に掛けていた上着を着た。 パリッとしたシャツに素敵なネクタイだ。 奥様のセンスだと思う。 「鈴木チーフはどんなタイミングで結婚を決めたんですか?」 聞くつもりはなかったのに、勝手に聞いてしまっていた。 鈴木チーフは驚いた顔をしたけど、すぐに優しく微笑んだ。 「乗りと勢いだね」 意外すぎる応えに私は目を丸くした。 「驚いた?」 私は何度も頷く。 「僕、23歳で結婚したんだよ。もちろん妻を愛してだけど、大半は乗りと勢い。」 鈴木チーフはノートパソコンと資料を持って、出る準備をする。 「結婚は最大のギャンブルだよ」 予想外の発言に驚く。
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