4942人が本棚に入れています
本棚に追加
「一輝の傍にずっと居てくれていたのね。ありがとう」
カフェテリアの窓際に向かい合わせに座り、一輝のお母さんが私にそう言った。
「もう愛想つかされても仕方ないのに…」
申し訳なさそうにする一輝のお母さんの姿を見て、必死で横に首をふるう。
「先週連絡があって、仕事を辞めたって聞いて驚いて…電話じゃ一方的に言って終わりだったから、よくわからなくて出てきたの」
私と一輝のお母さんとは、一輝の報告に時差がある。
「次の仕事は決まってるからって言って一方的に切られてしまって、今何をしてるのかもわからないし…」
デイトレーダーとは親には言えなかった様子だ。
「結ちゃんも驚いたでしょ?」
「…はい」
店員さんがコーヒーを運んできてくれた。
ゆらゆら上る湯気。
「29歳にもなって、フラフラして情けないわ」
肩を落とす一輝のお母さんの表情が、とても辛そうだった。
「結ちゃんにも本当に申し訳ない」
「えっ?」
「もう5年以上お付き合いしてるでしょ?なのに、一輝の行動は貴女にも誠実じゃないわ」
一輝のお母さんがそんな風に思って下さって居たのは予想外で驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!