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「勇輝が主人の後を継ぐことになりそうで、そのこともあの子に伝えに来たのよ」
勇輝、一輝の3つ下の弟。
一輝の実家は代々続く地元の小児科。
「まだ暫くは大学病院でお世話になるから数年先の話だけど…」
その話を聞いて、私は何となく昔を思い出した。
一輝も昔、お医者さんになりたいって言ってたことを。
私が再会した時は、一輝はT大の経済学部に居た。
もちろん中学の時の夢なんて変わってもおかしくない。
でも何となく気になって、一輝のお母さんに聞いてみた。
「一輝さんも昔、医師になりたいって言ってた記憶があるんですけど…」
「…えぇ。私も勝手に一輝はずっと医師を目指してると思ってたの」
「えっ?」
「高校3年生の時に経済学部を受けるって聞いて、驚いたのよ。主人もすごく落ち込んで…でも、勇輝がなるって言ってくれて、2浪したけど何とか無事卒業も出来て…」
私の知らない一輝の人生の一部を知った気がした。
「昔からやんちゃで手がかかる子だった。でも、自分でしっかり生きていけるのなら、人様にご迷惑かけずに生きてくれるなら、それでいいのだけど…」
一輝のお母さんは苦笑いして、コーヒーを口にした。
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