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―夜
予告もなしに突然一輝が私のマンションにやって来た。
「まだ怒ってんの?」
玄関の扉を開けて私の顔を見たらすぐの言葉だった。
脱力する。
「怒ってないよ。呆れてるけど」
そう言って笑ってしまう私。
一輝は扉を閉めて玄関で私を抱き締めた。
一輝の香りに包まれて、私は安心する。
これがダメだとわかっていても、突き放すほど強くもなれなかった。
会いたかった気持ちが勝ってしまう。
「おばさまに叱られた?」
「そんな歳じゃねぇよ」
「じゃ、何で会いに来たの?」
「限界だったから」
唇を合わせて温もりを確め合う。
深く、深く。
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