平凡な毎日

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会場に飾られた装花を水差しで水を足しながら、細かいチェックを行う。 変色など見つけたらすぐに処理をする。 20卓以上のテーブルをまわる。 エプロンのポケットに入れたハサミで切ったり、調整していく。 「高城さん、おはよう」 声のする方に振り向くと、ブライダル課のチーフ営業マン、鈴木久志が大きな扉から顔を出していた。 「鈴木チーフ、おはようございます」 私は営業スマイルをした後に、また手元の花に目をやった。 「早いんだね」 「鈴木チーフこそいつも早いですね」 「会場チェックしとかないと落ち着かなくてね」 鈴木チーフは私のテーブルまで来た。 彼は妻子持ちの30台後半。 最近やたら私に構ってくる。 「高城さんのセンスが光るね」 会場を見渡して彼は私を見た。 「ありがとうございます」 「今晩夕食どう?」 安い女に見られてるのかもしれない。 私は作り笑顔のままキッパリと断った。 「遠慮します」
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