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落下
マヤマがいない空虚さを抱きながら数日ほどが経ち、帰り支度をしているところでクラスメイトの噂話が聞こえた。
「お金目当てだって。それでボロボロに」
「だれ?」
「隣のクラスの、あの陰気な子」
最初は小さな波だった。
揺れが、はじまる。
「よく呼び出されていたよね、可哀想」
「お金を巻き上げられていたから」
「とうとう学校に来なくなっちゃって」
がくんと、膝から引っ張られる感覚。穴に落ちるように、重力に導かれて体が滑り落ちていく。
それでも懸命に、僕はロープを掴んでいた。落ちてはいけない、落ちてしまえば戻れなくなる。
「その噂、ホントだよ。動画あるけど見る?」
落ちまいと必死に耐えている僕は、確かにその声を聞いた。
その声色を僕はまだ覚えていて、だから振り返って、彼女の表情を見てしまったのだ。
コンちゃんは、
コンノは、
嗤っていた。
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