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「あ、コンちゃんだ」
僕たちよりも遥か先、校門近くにコンちゃんの後ろ姿があった。みつ編みにしていた黒髪は、金茶に染まってばさりと背中に流れている。スカートの丈もマヤマより短く、妙な空気を纏っていた。
「コンちゃん、変わっちゃったね」
寂しさを押し殺したマヤマの声が、僕の耳をくすぐる。
僕たちは、ギリギリの存在なのだ。
子供と大人。その境界線に立っている、狭間の存在。
左には子供の世界、右には大人の世界があって、その境目に細いロープが引かれているのだ。
僕たちはロープの上に立ち、ぐらぐらと揺れている。強く風が吹いて体が傾けば、子供になり、大人にもなれるけれど、まだ完全に落ちてはいない。
落ちてしまえば、戻ることはできないだろう。だから僕はロープの上で揺らされるまま。
落ちる勇気はまだ、ない。
コンちゃんは、落ちてしまったのだろうか。
僕もマヤマも知らない、大人の世界に。
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