5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
家に帰ると、マヤマの母が来ていた。
昔はよく来ていたのだが、最近は見かけていなかった。久しぶりに見るマヤマの母は顔色が良くなく、疲労が滲みでている。体調でも悪いのだろうか。
目が合い、気まずさから頭を下げた。そのまま自室へ向かおうとしたところで、マヤマの母が僕を呼び止めた。
「うちの子、最近どうかしら?」
ひどく重たい声だった。
しかし、毎朝マヤマと一緒に登校しているが、変わったことはない。今日だっていつも通りだった。
首を傾げたまま黙り込む僕に、マヤマの母は諦めたらしい。
「……もし、何かあったら、おばさんに教えてね」
その表情は助けを求めているようだった。
自室に戻っても、マヤマの母が残した表情が頭を離れない。
僕も、あんな顔をして、ロープにしがみついているのだろうか。
大人になりたくない一心で、ただ必死に。ぐらりと揺れてもバランスをとって、なんとかギリギリを保っている。
最初のコメントを投稿しよう!