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このロープの上にマヤマがいることを、僕は知っている。
「おはよう」
だから毎朝、いつもと変わらないマヤマがやってくることに安堵しているのだ。朝日に照らされた横顔は幼さを残していて、僕の心を宥めてくれる。派手な化粧もしていないし、スカートの丈も長い。
確かめるように視線を降ろした時、それに気づいた。
「なんだ、その痣」
マヤマの足に、青紫の痣が出来ていた。
見ているだけで痛々しいそれを、マヤマは鞄で隠して、笑った。
「転んじゃった」
本人が転んだと言うのだから、きっとそうなのだろう。マヤマは不器用でドジなところがある。それを知っていた僕は、マヤマの言葉をすんなりと受け止めていた。
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