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校門前に近づいた時だった。いつもと違う、校門前に赤いスポーツカーが停まっているのだ。
「……コンちゃんだ」
マヤマが呟いてすぐ、車からコンちゃんが降りてきた。
コンちゃんを降ろしたスポーツカーは走り去り、入れ替わるように取り巻きたちがコンちゃんの周りに集まった。
「おはよ! ダーリンに送ってもらうなんて、昨日はお泊まり?」
「やあだ、鋭い。すぐバレちゃう!」
その真ん中でコンちゃんは笑っている。ちらりと僕たちを見たけれど興味ないと言わんばかりに視線を戻し、またくだらない話を続けていた。
僕も、マヤマも。足を止めていた。まるで濁った水を飲まされているように、口の中がべたべた纏わりついて気持ちが悪い。
「あ、あの、ね」
マヤマが僕の袖を掴んでいた。だが、いつもより力が弱い。
マヤマの震える唇が言葉を紡ぐ。視線は僕ではなくコンちゃんに向けられたまま。
そして僕は聞くのだ。波の音、振動音。とにかく僕を揺らす音。
「……明日から、別々に登校しよう」
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