子供と大人の境界線

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子供と大人の境界線

 子供と大人の境界線を、僕は知っている。 「それでね、お母さんが言うの。お小遣いが足りなければバイトでもしなさいだって。やだなあ」  子供、大人と線引きをするのなら、どこではっきり区切るというのか。  体つき? 思考? 責任? どれを持ち合わせれば大人になるのだろう。  曖昧な区別に身を委ねて、ただ流されるだけの僕らは、その答えを知らない。 「ねえ、聞いてる?」  ぐい、と力強く袖を引かれて、足がもつれる。考え事をしていたからかあわや転びそうになったものの、数歩ほどよろめいてなんとか体勢を立て直した。  僕の慌てた様子に、マヤマはしてやったりとにやついていた。これが幼馴染のマヤマでなかったら僕は怒っていただろう。 「人の話を聞かないからよ」  小学生の頃と変わらない、いたずらっ子の目が僕を見ていた。  真新しい高校はまだ大きく、袖が少し余っている。マヤマが小柄なこともあって、制服を着ているというよりは制服に着させられているようだ。漂う幼さにうっかり顔が綻んだが、マヤマの頭をこつんと叩いて誤魔化した。 「頭を叩いたね? はげちゃったらどうしてくれるの」 「そしたら、お前のことをカッパと呼ぶよ」  僕はすっかり背も伸びて、マヤマを見下ろせるほどになってしまったけれど、成長したのは体だけ。女子だろうが男子だろうが、友達とはしゃぎあうことを楽しく感じるのは、小学生と変わらないのだ。 「いたね。カッパに似たキューリ先生」 「懐かしいな。小学校3年生の時だっけ」 「そう。カッパと呼んだらお説教されちゃうから、キューリ先生って呼んでいたの」 「それでもめげずに、僕はカッパと呼んでいたけどな」 「そのせいで居残りお説教食らって、放課後の秘密基地作りができなくて……あの頃は楽しかったなあ」  僕とマヤマは一緒に登校している。家が隣だからという理由で始まった登校だが、いつしか当たり前となり、高校生になっても続いていた。  小学生の頃は、僕とマヤマ以外にもう1人いた。近所に住むコンちゃんだ。途中で合流し3人で登校していたのだが、いつのまにかコンちゃんは別に登校するようになってしまったのだ。
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