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「あ、そうだ、髪乾かしてよ。こんなに長いと時間かかるんだよねー」
ユウキはいそいそと私の前に腰を下ろした。
私は自分で持ってきたドライヤーとブラシを取り出し、丁寧に梳っていく。
シャンプーのにおいか、
はたまた髪の美容液か、
その二つがまじりあったものかもしれない、
少し柑橘めいたにおいが鼻腔をくすぐる。
ブラシを通すとするすると流れるのが心地よかった。
「なんか、ツグミの手って落ち着くね。触れてると優しい温かさが伝わってくる」
「ていっても今触ってるの髪だけだよ?わかんなくない?」
「なんか、それでも感じるの。こういうと変態みたいだけどね」
「あほなこと言ってないで、ほら、動いちゃダメ」
そのあと会話はほとんどなく、ドライヤーのぶおぉという音だけが空間を満たす。
こうやって髪を乾かすのは、わたしだけに許されているような気がして少し嬉しかった。
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