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ミステリ研が在籍している桜川高等学校は、創立60周年を迎える、由緒正しき男子校である。
第一次ベビーブーム、いわゆる団塊の世代に造られた高校だけあって、校舎もでかいし、校庭も広い。
残念かな、昨今の少子化の煽りを受けまくって、学生の数は年々下降傾向。必然的に空き教室がチラホラどころか、ゴーストタウン状態。
これじゃあ、何者かが住み着いたとしても誰も気がつかないぞと、いや、実際そんな事件があったのかもしれない。
理由はさておき、市と学校が協議した結果、学生は好きなだけ好きな事を研究したまえ、とばかりに、会員1人から研究会を発足することができるようになった。
安藤は入学当初から、何かしらの研究会を立ち上げたいと考えていた。
しかし彼には今まで夢中になったものなどなく、特に研究したいテーマなどもない。
悩んだ末に『研究会を研究する研究会』略して『ケンケン研』もちろん安藤が付けた略名だ、を発足したのだった。
名前が怪しいのか、安藤が異質なのか、研究会を訪ねる会員は1人もいなかったが、安藤はとりわけ気にすることもなく、わずか6畳ほどのタイル貼りの部屋に『畳研究会』から譲り受けた高級イグサ畳3枚を敷き、ほとんどの放課後をその畳の上で過ごした。
そして、ある時は、校庭のそばを流れる川沿いの桜を眺め、一句詠んでみたり。
またある時は、その頃発足された『ミニスカート研究会』の会合に参加し、略名『ミニス研』について大いに意見を交わしてみたり。
ついには、教科書を持ち込み、試験勉強に励む。と、まあ彼なりに有意義な日々を過ごしていた。
そうして、彼が3年生になった時、件の男が現れたのだ。
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