付箋倶楽部

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「――歴史は四十年前からだ。記録があるのが四十年前からというだけで。付箋で確認できた日付で最も古い日付は六十年前のものだった。若しかしたらもっと昔からある存在なのかもしれない。何故こんなことを始めたのか、誰が始めたのかは知らない。知る必要がないからね」 猫のように天鵞絨は机から降りる。すぐさま店番が商品を元の位置に戻す。天鵞絨はそれを見て、かさかさと笑った。踵を地面に着けない爪先立った独特の歩き方を天鵞絨はする。 「それだけさ。本当に守るべきルールはたったの7つ。文言化されているルールは7つってこと」 ぱちん!指が鳴る。 「1つ、書いてる者を特定出来るようなことは書いてはならない」 2つ、と諦めたように店番が腕組みをしながら口を開く。 「2つ、同じ色と色を使用することは禁ずる」 「3つ、真実ばかりを書いてはならない」 「4つ、薄藍と金色ペンの者の指示には従わなくてはならない。尚、この者を騙った者には厳罰が処される」 「5つ、活動時間は日々の隙間であること」 「6つ、他の者の付箋を勝手に剥がすことは禁ずる」 「7つ、我々付箋倶楽部は、この学園に蔓延るファンタジィとして活動を行う」 店番と交互に言い合って、天鵞絨はお決まりの、ぱちん、指を鳴らす。フロア・ライトに照らされた彼の顔はまるで天使のような無邪気さであった。ブロンドが下からのライトにきらきら光る。 「入ってみないかい、君。別に変わったことを書こうなんて思わなくていいんだ。飛行倶楽部って言ってたな。例えばあの風を切る音――藍色の空を飛び回る気持ちはどうだ!空を駆け回る白い鳥になっているんだろう?もはや我々の住む星には鳥はいないけれど、少年は飛び回る!」
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