付箋倶楽部

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空を滑空する紙飛行機のような、僕らの乗るエアプレーンを思い出す。エアプレーンの滑空のように天鵞絨と指が空を切る。その手は実に白く、フロア・ライトに照らされて眩しいほどだった。ただ、その手の甲には恐ろしく暗い。眩しいからだ。眩しいから、暗い。 「入部届けも必要ない。ただここで2つ買い物をする。付箋とインク。どうぞお好きな色をお選びください」 天鵞絨の乾いた笑い声が虚ろに響く。天鵞絨が同じところで留まっているので、彼の足元のフロア・ライトは徐々に明るくなっていく。フロア・ライトは熱を吸収して光る。彼の薄い上履きがフロア・ライトの上に流れる空気を遮断して、だんだんそこが暖かくなっていくのだ。そして熱を吸収して明るくなる……。 フロア・ライトの上にものを置いてはならない。フロア・ライトはその建物の唯一の光源で、それを覆うと全ての明かりが消えてしまう。マジックミラーの天井は明かりを上の階に伝えて、下の階の明度を増幅させるためにある。 ただ、フロア・ライトを遮ると明るさは増す。不思議であった。 「……天鵞絨」 「なんだい、緑青」 「その、付箋だのインクは、そこで買えばいいわけ」 「そうとも!」 ぱちん!勢いよく指が鳴る。僕は天鵞絨から視線をはずして、店番の方を向く。彼は唇を不愉快そうに歪めたまま、無数の付箋とインクを取り出していた。 「あの、」 「月白(ゲッパク)」 「え?」 店番は底光りする瞳でこちらを上目遣いで見上げる。その手は手際よく目が痛いほどカラフルな商品を並べている。 「月に、白。で、月白。そこの馬鹿みたいにルナなんて呼んでくれるなよ。そっちは」 「緑青」 「ふぅん。いい名前じゃないか」
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