始まり

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映画館の中は平日であるのにも関わらず思っていたよりも人でごった返していて、見ようとしていた上映時間の回は既に売り切れという赤い文字が空しくも堂々と画面越しに表示されていた。微妙に時間は開いてしまうが見たい!という彼女の希望から結局1本後のものを見ることに決め、映画が始まるまでの暇つぶしに毎日がお祭りのように賑やかで見どころが多く、雑多な都会の人の波の中を僕らは歩いていた。  太陽の日差しは温かく降り注ぎ、心地よい水色の空には雲がまばらに広がって穏やかな気持ちにさせてくれる。 人の装いも前に比べると少し軽装になり、ショーウィンドウのマネキンも淡いワンピースを纏っている。 街の華やかさとともにマスクをしている人も多くなり、花粉の季節もやってきていることを物語っている。 「そういえばもう少ししたら満開の桜が見られる頃だよね。」 小さなくしゃみをしてから彼女は思い出したかのように呟いた。 この時期なるとくしゃみの回数が増えてくるので、そこで春の訪れ・再確認の判別材料になっていたりする。 「そうだね、もうそんな季節になったんだっけ。」 このくらいの時期に彼女に出会ったことを思い出しながらも、僕は同じように呟くと何かひらめいたような顔をして君はこちらを見た。 「桜で思い出した!学校近くの神社あるじゃない?あそこ、ちょっと変わった噂があるんだ! …知っている?」 「噂?ううん、知らないな。教えてくれないか?」     
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