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僕がそう聞くと彼女は悪戯っぽく笑いながら僕の耳元で「実はね。」と言い始めた。彼女の言葉が聞けるよう少しだけ身をかがめたが、人ゴミが生み出している音がザワザワしているせいか少し声が聞き取りづらかった。
「学校の近くに桜の木が沢山ある神社があるでしょ?
噂ではね、その神社に続く道の桜の中に一本だけ不思議な桜があるんだって。その桜はその人が逢いたいと思っている人に逢わせてくれるらしいよ。」
「逢いたい人?」
「そう!でも逢うためには何かしら条件があるらしいけど…。残念ながらそこまでは何も聞いてないだよね。話としては若干胡散臭いけどね。」
彼女は少し悔しそうに言う。
(どこから仕入れているか分からないが)情報収集に長けている彼女がその手の話を掴めてないのは珍しい。しかし噂は本当なのだろうかちょっと信じられないというか胡散臭い気がしてならない。
逢いたい人ねぇ…。
僕は頭の中で思い浮かべてみたが誰も浮かばなかった。
「私は逢いたい人には会っているから今のところ大丈夫かな。」
僕の方を見ながらそう言って彼女は可愛らしく微笑んだ。
よく笑う彼女がさらっと口に出していう言葉には破壊力があるっていう事を本人は全く自覚していない。
それが彼女の長所でもあるが自分ばかり意識するのもどこか悔しい感じがする。
なんて言えるはずもなく、僕は腕時計を彼女の前に出しながらも自分の照れを隠すため
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