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「あそこに女の子が倒れている。ちょっとだけ待ってて。」
そう言うと同時に彼女は手を離して女の子のもとへ駆けて行った。
「大丈夫?」と優しく声をかけて、大粒涙を零しながら泣いている女の子の手をとってイタイノイタイノトンデイケと言いながら絆創膏を貼っていた。
どうやら女の子の左膝を擦りむいたらしい。
彼女の優しさには感服するがそれよりも早く彼女とここから離れたいという思いが頭の中を駆け巡ってそれどころじゃなかった。
ふと視線をずらして人が手薄になっている場所に目をやると2人の後ろからやってきた嫌な正体が僕の目にはっきりと映った。
返り血でアンバランスに染まった服を着た男が徐々にこちらへ向かってくる。
手には赤い滴がついたナイフを握り、目をギラギラと光らせながらも何処か遠くを見ていて口角の片端のみが上がっているその顔は今まであった人の中で最も恐ろしくぞっとする。
というか同じ人間とは思えない。
爛々と輝いている男の目線は彼女と女の子の方へ向けられた。
まずい、このままでは本当に彼女たちが危ない。
「早くそこから離れろ!!!!!!」
僕は彼女に向かって思いっきり叫ぶと彼女は不思議そうな顔をして後ろを向いた。
若干遠くにいるというものの一瞬で状況を理解したようだった。
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