間違い探し

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 拒否するのを躊躇ってしまうほどには僕も、よくよく思い返せば酔っていたのだろうな。 「駅前の公園で、一服して、帰るとするよ」  踵を返した僕の手にかじかんで力の入らない小さな小さな手が、触れた。  彼女もきっと、僕を欲しくて、僕はきっと過ちを犯すことだろう。体の芯から熱いものが迸って、だんだん黒く染まる。 「帰っちゃやだ」  ああ、もう。  帰りたくないよ。  ヒロコちゃんがシャワーを浴びている間、いつもは彼氏が使っているであろう避妊具をまじまじと眺めたり、壊れたスマホの充電器を直してあげたりして過ごしていた。  間違いを犯さないことに対して、僕たちは非力で、若すぎる。ただ、それだけ考えながら。  ガラリ、と戸が開く音で体がこわばる。「灰皿はないの?」「あるよ」と出された伊右衛門のペットボトル。彼氏には、あたしタバコ吸ってないテイでいるからとかなんとか言っていた。  一服して、シャワーを浴びて、とりとめもない話をして。  ジャンキーな缶チューハイで理性に麻酔を打って。  ここまできて純情ぶろうと炬燵で寝るって言い張る僕を、ヒロコちゃんは手を引いてベッドに導いた。 「あ、この折り畳みベッド僕の部屋のと一緒だよ」 「ホント? 2人で寝転がって、壊れたりしないかなあ」 「彼とはいつも寝てるんでしょ」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加