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拒否するのを躊躇ってしまうほどには僕も、よくよく思い返せば酔っていたのだろうな。
「駅前の公園で、一服して、帰るとするよ」
踵を返した僕の手にかじかんで力の入らない小さな小さな手が、触れた。
彼女もきっと、僕を欲しくて、僕はきっと過ちを犯すことだろう。体の芯から熱いものが迸って、だんだん黒く染まる。
「帰っちゃやだ」
ああ、もう。
帰りたくないよ。
ヒロコちゃんがシャワーを浴びている間、いつもは彼氏が使っているであろう避妊具をまじまじと眺めたり、壊れたスマホの充電器を直してあげたりして過ごしていた。
間違いを犯さないことに対して、僕たちは非力で、若すぎる。ただ、それだけ考えながら。
ガラリ、と戸が開く音で体がこわばる。「灰皿はないの?」「あるよ」と出された伊右衛門のペットボトル。彼氏には、あたしタバコ吸ってないテイでいるからとかなんとか言っていた。
一服して、シャワーを浴びて、とりとめもない話をして。
ジャンキーな缶チューハイで理性に麻酔を打って。
ここまできて純情ぶろうと炬燵で寝るって言い張る僕を、ヒロコちゃんは手を引いてベッドに導いた。
「あ、この折り畳みベッド僕の部屋のと一緒だよ」
「ホント? 2人で寝転がって、壊れたりしないかなあ」
「彼とはいつも寝てるんでしょ」
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