26人が本棚に入れています
本棚に追加
「キミだって、彼女といつも寝てるじゃない」
罪を分かち合って、啄むようなキス。さらさらの唾液がくちびるとくちびるに淫靡な糸を引く。
「好きだよ」
もう、駄目だった。
際限なしの淫らな口づけが、漆黒の聖夜に何度も何度も咎を打ち付ける。僕たちは果てのない肉欲の海へとボートから投げ出されてしまった。
約束も保証もない愛を囁き合っては間違いを再確認する。悲しいまでのふたりよがり。もっと早くに出会っていればこんなに不自然な形で結ばれることもなかったろうに。
思えば出会いは単純なものだった。僕は駅前の公園で恋人を待っていて、ヒロコちゃんも同じく、駅前で恋人と待ち合わせ。
おしゃれな女(ヒト)だなあ、釘付けになったのはどちらともなく。きっと、どちらも同じタイミング。
一緒の大学だよね?
そうだと思う。何回生?
2回生。
僕も。同期だね。
そのとき彼女は、タバコを吸ってはいなかったけれど、僕のタバコに火を点けてくれた。
「あっ、だめ」
思いがけず、同時に果てると、重なったまままたキスをする。もう、こうなったらどこまでも可笑しい。
行きつく先は泥か汚れたダンボール。陸地なんて、見えてこないし。
最初のコメントを投稿しよう!