26人が本棚に入れています
本棚に追加
繰り返し、つながった。朝日がのぼっても猿みたいにキスをして、とうに壊れきっている貞操観念をいたぶりつくして、凌辱の限りを尽くした。
嬌声が響く八畳一間の下宿に、黒い海がばら撒かれて、ピンクのクラゲが水面を揺蕩う。
抱き着き合って、火照りはなおも冷めない。
昼間になって、醒めない。
また夜が来て、ご飯を食べることも忘れてまたまぐわった。果てもなく、果てて。
「好きだよ、好き」
「僕も好きだよ、愛してる」
嘘で塗り固めたベッドの上はいやに弾力が良かったんだ。
******
その日からヒロコちゃんとは連絡を取っていない。これも、どちらともなく。
せいせいするほど気が合った。
あの公園でタバコを燻(くゆ)らせヒロコちゃんとの過ちを思い出す。僕は当時付き合っていた恋人とはとっくに別れているけれど、ヒロコちゃんといえばどうしているのだろうな、と。
思っていた矢先、ヒロコちゃんが男に手を引かれ駅に向かうのを見た。
とても、幸せそうに。
どす黒く膿んでいた何かが、いちじくのつぶれるような音を立てて、僕は少し悔しくなった。真っ当な人生を送るであろう彼女とはもう、関わっちゃいけないんだ。なんと僕の女々しいことか。
一度の遊びくらいとっくに忘れてもいい頃だろうに。ごめんなさい。
最初のコメントを投稿しよう!