SUICIDAL SHINEN GIRL

　脅かさないでよ、と言って彼は私を起こしてチューしてくれました。その夜は中に出されたので次の日仕事を遅刻して産婦人科でモーニングアフターピルをもらいました。

　思えばここから深淵にはまっていたのかもしれません。

　彼は避妊してくれなくなりました。私が喚いても嫌がっても「いいからいいから」の一言でうやむやにしてしまうのです。

「子供ができたらどうするの」
「そんなの、結婚すればいいじゃん」

　この人の人生設計と人格には大きな欠陥があると気付きました。毎回アフターピルを飲むのも辛いので今は産婦人科に通院して、ピルを処方してもらっています。

　そして、今日。再び現れた深淵ちゃんに為すすべもなく「深淵入り」を告げられてしまったわけです。どうしたらいいのでしょうか。とりあえず、店を出なくてはと店員さんを呼びお会計をお願いしました。千五百円しかお店に貢献してあげられなくてごめんなさいと心の中で懺悔しながら。
　レンガ造りの落ち着いたいい居酒屋だったなあ、なあんて思いながら店を出ると、ちょうど彼が知らない女の人の肩を抱いて店に入っていくところでした。

　一瞬、目が合った。

　視線は右から左へ流れてそのまま店内のボックス席に座ってしまいました。またも私は走って逃げました。