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「一花紗世です。よろしくお願いします」
「……ひとはな?」
「はい。一と花でひとはな。珍しいし呼びづらいので適当に呼んでください」
本音だった。
この名字のせいで、銀行や病院、公共施設で呼ばれる時も新しい場所で自己紹介する時も、いつだって大抵二度見されたり聞き返されたり、正直面倒くさい。
「変わってんなあ。なんて呼ばれたりした?」
そう尋ねてきたのは、東屋さんの隣のデスクの人だった。
「あ、俺、糸井。よろしく」
「よろしくお願いします。大学の時は、あだ名で『ひとちゃん』とか『いちか』とか。そう呼ばれると、ほんとにそれが私の名前だと勘違いする人もいるんですけど」
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