はらはらと、花びら舞う

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「ああ、ひとちゃん可愛いね」 「あとは、下の名前で呼ばれるのが定着してました」 さよちゃん、とか。 そう言うと、糸井さんは少し意味ありげな目で東屋さんを見て、私もそれにつられてつい東屋さんの横顔を見る。 東屋さんは、ぴくっと瞼を痙攣させたが、素知らぬ顔だ。 「あー、うちでは『さよさん』って言ったら別の人がいるからさ」 「そうなんですか?」 「そう。ほら、あそこ、西原さん」 「もういいだろ、糸井」 確かさっき、促進課のメンバーを紹介された時に聞いた名字だった、と思ったけれど。 それを確かめる間もなく、ぴしゃんと会話をシャットアウトしたのは東屋さんだった。 「じゃあ、一花さん。仕事説明するから来て」 「はい」 ……まあ、なんとなく、その意味ありげな空気で、多分誰でも気付くだろう。 東屋さんと西原さんには何かあるのだ、と。
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