僕の初バイトと清水さん。

1/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ

僕の初バイトと清水さん。

四月二十八日。今日も一日何事もなく授業が終わり、学園では放課の時間を迎えた。僕は今、部活動に参加しているわけではないから放課後になると基本いつもすぐに帰ってしまう。けれども今日は大きな理由があるのですぐには家には帰らない。  今日は僕が人生で初めてのバイトを経験する日なのだ。 バイト先は「清水和菓子店」。和菓子店と銘打っているけれども季節によってはケーキ類などといったお菓子も販売している瓦屋根の渋い雰囲気のあるお店だ。 今そのお店へと足を向けているけれども、実はちょっと緊張していたりする。 はじめての経験だからっていう事もあるけれど それ以外の理由も恐らく……いや、確実にあると思う。 「清水さん」。 僕が緊張している主な理由はこの人だろう。 僕が密かに憧れている先輩で薄いながらも関わりを持っていた数少ない人だ。先日卒業してしまったけれど今ではどうやら清水和菓子店で働いているみたいだ。 さて、どうして僕が緊張しているのかというと、どうやら清水さんは僕のことを覚えていないらしい。 このことは先日行ったバイトの申込みで気づいたことだけれど、この事は関わりを持っていたと思ってていた僕に大きなダメージを与えた。 相手が覚えていないのにこちらが一方的に知り合いとして接していくのはなんだか勇気がいるのだ。だから緊張しているのだと思う。詳しくは自分でもわからない。 そうこうしているうちに気がついたらお店へと到着していた。 今ここで悩んでいても仕方ないからとりあえず今はここでバイトをしてみて、そこからもう一回関わっていくことにしよう。うん!そうしよう。 そうと決まったらこの初日での印象が大切になってくるだろう。大切なのは笑顔にはっきりと喋ること。それとどんな状況でも心を折れないようにすること。よしっ!頑張ろう。 深呼吸をして扉を開ける。折れない心、折れない心.......。 「こんにちわ?。先日お話をさせて頂いた者です。短い期間ですが宜しくお願いします。」 「.........うるさい。分かったから早くそこにある制服に着替えて店の前を掃除しといて。」 お、折れない心、、、折れない心。大丈夫だ僕、僕ならできる。 一瞬にして粉砕されかけたメンタルをなんとか元に戻して制服に着替えるために更衣室へと向かう。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!