僕の初バイトと清水さん。

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制服といっても清水さんの着ているような風格子の服ではなく、和柄のエプロンと黒を基調としたゆったりとした服だった。名前はよくわからないや。あとで調べてみよう。そんなことよりさっさと着替えて掃除をしにいかなくちゃ。閉店時間まで後り四時間ちょっとだから掃除をする必要もないと思うけれど口を出すわけにもいくまい。手近にあった箒を持って店前の通路を掃く。時間のせいか夕日が空の彼方に沈み始め辺りが薄暗くなってきた。通路の横脇にある石灯篭に明かりが灯り始めた。こうしてお店を改めて見て見るとなかなか風情のあるいいお店じゃないか。今までどうしてこんなある意味目立つお店に今まで気づく事ができなかったのだろうか。不思議だ。 一通り掃除も終わったので店内へと戻る。これは後で気がついた事だけれど清水和菓子店では和菓子の販売の他に隣のスペースにあるボックス席とカウンター席で飲食が出来る場所がある。メニューの中に紅茶やコーヒーがあったから恐らくその場でお菓子を購入をし、ボックス席なりカウンター席でお喋りをしながらも素敵なティータイムを楽しむことができるのだろう。なんとも有意義な時間だ。 けれども僕が店に入ったときはどちらの席にも人の姿は見えず結局僕が外の掃除を終えるまでには誰も来店しなかった。まぁ、こんな日もあるのだろう。 正直初めは接客しなきゃいけないかなと思って緊張していたけれどその必要はなかったので安心した。やっぱり初日は不安なのだ。まぁ、初日は何事もなく終わりそうで良かった、良かった...........ん?? 店内を見渡してみて自分の目を疑った。つい1時間前は誰もいなかったはずのカウンター席にお客さんがいるじゃないか。しかも三名。どういうことだ? いつ入店してきたんだろうか、外で掃除をしていたにも関わらず全く気が付かなかった、、。 頭の整理が終わってない僕に対して清水さんがバックヤードから相変わらず冷たい目で手招きをしていた。急いで清水さんのところへ駆け寄る。 「紅茶3つ、そこのお客様に出しといて。」 「わ、わかりました。」 手渡された紅茶をカウンター越しに三人の席の前に置く。 「こちら紅茶になります。ごゆっくりしていってください。」 その際にさり気なく三名の顔を確認する。この時間に来るってことは常連なのだろうか?
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