0人が本棚に入れています
本棚に追加
「怒るなよ」
「怒ってないし」
「悪かった」
「だから、怒ってないし」
「誕生日、だろ?」
彼女の肩が、ぎくりと跳ねる。素直な反応に、苦笑が零れる。
「んな確認しなくても、プレゼントはちゃーんとやるよ」
「……そ」
「まったく、手のかかる妹だな」
来週の月曜日は、七月七日。
空想上のリア充が、年に一回逢瀬する日で、彼女の誕生日。
晴れた年は、彼女は彼氏と誕生日デートに行く。
雨の年は、大人しく家で手作りの誕生会。俺の家族も誘われる。
だから、俺は毎年、雨が降るよう願う。それこそ、七夕の願い事を使いきる勢いで。
だからこそ、軽い調子で言ったのだ。
それなのに、ちらりと俺を振り向いた彼女は、今にも泣きそうに、澄んだ瞳を潤ませていた。
最初のコメントを投稿しよう!