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「どうしても俺に譲る気はないんだな」
創は眉間にしわを寄せ徹を睨みつけ、険しい表情でそう言った。
「ああ、この場にいたっては僕から身を引くという選択肢はありえない」
徹も自分の眼鏡を指で上げ、鋭い目つきでそう答えた。
学校の昼休みも終わりが近づいているこの時、彼ら二人はある場所で互いに火花を散らしていた。
その場所とは……。
「じゃあどうする。このままだと俺たちは二人とも見るも無残な醜態を晒す羽目になるぞ」
「確かに、ここで共倒れは僕としても好ましくない。だが、今現在空いているトイレの席は1つ。どちらか1人は必ず外で待っていなければならない」
彼らは現在トイレの前で雌雄を決していた。
始まりは彼らが二人同時に洋式トイレのドアノブを触れた時だった。
この学校のトイレにある腰掛け便器は3つ、ここのトイレは1つが便器が詰まり、故障中の張り紙が貼ってあり、もう1つが使用中だったため、必然的に最後の1つの扉に手を触れる結果となった。
そして、互いに譲らないまま口論が続いている。
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