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「ならこうしよう。ここは公平にジャンケンで決めよう。勝った方がトイレを使用できる。ジャンケンなら完全に運勝負。どちらが勝っても恨みっこなしだ。どうだ?」
「うむ。それなら異論はなーーーーー」
創の提案に対して徹は同意しようとしたが口が途中で止まる。
「……どうした?」
創は徹に質問した。徹は再び眼鏡を指で上げ答えた。
「……創くん。君ほどの動体視力と反射神経があれば、僕がグー、チョキ、パーのいずれかを出す時、その直前の動きで予測して、 瞬時に勝ちの手を出す事が出来るんじゃないのか?」
創は発言に対し僅かに眉を動かす。その反応を徹は見逃さなかった。
「どうやら図星みたいだね。君が確定で勝てる勝負に乗るわけがない。提案は当然却下させてもらう」
「……確かに俺はその方法で確実にジャンケンに勝つ事ができる。だがお前はそれを逆に利用して、例えば右手で手を出す振りをし、手を出す直前、瞬時にあらかじめ自分の背で見えなくしていた左手を入れ替えて出す。という戦法も使えたはずだ」
徹は微かに笑い、創の質問に答える。
「気づかないと思ったか?今の僕の立ち位置から僕の後ろの窓に手が反射して映ってしまう。君から見ると背後の手の挙動はバレバレだ」
創は息を飲む。まさかそこまで看破されるとは思っていなかった。さすがは学年一の秀才だ。
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