昼休みの出来事

6/11
前へ
/11ページ
次へ
「互いにどちらが先にトイレに入るのがふさわし いか検討をしようではないか」 「検討だと?」 「何故ここまで譲る気になれないか、ただ単純に限界だからという理由だけではあまりにも説得力がなさすぎる。起こる結果には必ず明確な理由があるはずだ。その理由を互いに提示することで、どちらがこのトイレに入るべきかを決めるんだ」 つまり相手に自分が入るべきだと納得させるということ。 「いいだろう。ただし、俺に論破されても逆上はするなよ?そして負けたら相手に必ず譲る。抵抗などもってのほかだ、これは絶対条件だ」 「それは僕からお願いしようと思っていたところだよ。単純なケンカで僕が君に勝てるわけがない」 お互いに勝負内容に納得する。それはつまり、二人とも明確な理由が存在するということ。相手を納得させることができれば、トイレを使用できる。 「よし、なら始めよう。先に僕から話させてもらうよ」 先に徹が口を開く。 「理由は単純だ。俺は今日の昼食に、牛乳を飲んだ」 「小学校や中学の給食でもないのに牛乳だと?」 創は徹の発言に少々驚く。 「そう、しかも……」 徹はそう言って溜めた後、人差し指を一本空を突き破る勢いで高く上げる。 「1リットルだ!!!!!!」 「ば、ばかな……1リットルだと!?牛乳をそんなに一度にたくさん飲んだら…」 「そう。当然今俺の腹にはとてつもない激痛が走っている」 創は驚愕する。限界ギリギリとは言っていたが彼からその気配が感じなかったからだ。だがよく見ると顔に冷や汗をかいている。 その姿を見て創は微笑む。 「成る程、確かに辛そうだな。そんな状態で今まで耐えていたのか大したもんだ。」 「どうだ?おとなしく僕に譲る気になったか?」 「……お前の理由が壮大なのは認める。しかし、俺にだって引き下がれない理由がある」 「なんだと?この僕以上に辛い理由があるなら語ってもらおうじゃないか」 そう言って徹は創に指を指す。徹のその鬼気迫る表情に創は一歩も引かず、口を開いた
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加