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(おかしい……)
トイレの前で身構えたまま創は考える。
(奴ほどの頭なら理解しているはずだ。この勝負は、どれだけ早くドアノブに触れるかの瞬発力の勝負。そんな勝負でこの俺に勝てると本気で思っているのか?)
そう、先にトイレのドアノブに触れた方が勝ち。この勝負内容は運動能力の高い創の方が圧倒的に有利であるということ。
(俺の考えすぎか?しかしこの勝負は今奴から提案されたもの。つまりそこには勝てるための何かの策が存在しているということ)
創は徹の表情をうかがうが、徹は笑いながらこちらを見ていた。
(この状況でなんだあの表情、やはり何かある!今すぐにドアノブに触れるのは非常に簡単なことだが、俺から動くのは危険だ!)
創は自分から動くことをやめた。それは例え相手に先に動かれても勝てる自信があったからだ。
(これ以上ごちゃごちゃ考えるのは、もうやめだ。奴から動いたら、瞬時に手を弾き、俺がトイレに入らせてもらう)
そう思い創は徹の策を看破することに全神経を注き、彼の反応を待つ。
しかし、この時既に創は徹の術中にはまっていることに気づかなかった。
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