後悔裁判

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タオルを持って、心配そうに見つめる母。 その瞬間、ハルマの中でキレる音がした。 放っておいてくれ、邪魔しないでくれ。 俺の世界に、勝手に入ってくるな。 気付いた時には、ハルマは拳を振り上げていた。 やってはいけない事だとわかっていた、それでも止まらない。 殴られた母は少しふらつき、ペタンとその場に崩れ落ちる。 「は、ハルマ……?」 その言葉で、ハッと我に帰る。 刹那、後悔の意識が雪崩の様に押し寄せた。 だがそこで、言葉が出ない。 数文字の言葉が、意固地になって言えなかった。 俺は悪く無い、悪いのは母親。 そう思いたかった。 「あぁ……ぅああ……!!」 「ハルマ!!」 逃げる様に、その場から駆け出す。 この場に居たく無い、それだけの意思で走った。 それが間違いだったと、気付けない馬鹿だった。 静かに降る雨。 冷たく切なく注ぐ雨は、車1台も運命を狂わせる。 飛び出したハルマの目に最後に映ったトラックが、嫌に赤く見えた気がした。 ……たった一言……
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