36人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「手紙ありがと。
ゆうこ俺、ちゃんと帰ってきたよ?」
「貴志クン…ゴメンね?
私、もう待ちきれなくて。これから探しに行こうかと……あ…」
「泣くなよ!
ゆうこが泣いたら__俺も悲しい」
「た、貴志クンッ。
もうどこにもいかないで?
ずっとずっと…一緒にいて」
「わかったよ。
どこにもいかない、君のそばにいる。ゆうこ……ん…」
「貴志くんっ…くふっ…」
ひしと抱き合い、口付けを交わす2人__
から離れること3メートル。
リビングの隅に置かれたコタツに、受験生の私がいる。
さっきから、カチカチする度に折れまくるシャーペンの芯を。
兄の指とツメの間の、やーらかいトコでカチカチしたい。
そりゃあ確かに、ゆうこさんは可愛いよ?優しいし、女子力高いし。
なのにナゼか兄を選び、イマドキ快く実家同居を受容している。
しかし__
私は声を大にして言いたい。
『兄ちゃんさ、たった2泊出張してただけじゃんか。
“どこにも行かない”って、命令違反でクビになるじゃん?』
でも、何か妬いてるみたいで悔しいから。
せめてあの延びきったヤツの鼻の下に、因数分解書きなぐりたい。
終
最初のコメントを投稿しよう!