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僕は、慎重に土をよけて、そっと黒いビニールの物体を引き上げて横の土の上に置いた。
そして、黒いビニールからトランクのようなケースを取り出した。
そっとトランクを開けてみると、そこには時刻の表示板とプラスチック爆弾のようなものが入っていて、複雑に配線されていた。
時刻は、残り時間を表示するようで、残り1分を切っていた。
僕は、どうしたらいいのかわからず、途方に暮れていた。
(いちかばちか、どれか配線を切断しよう!)
こう考えた僕は、時刻の表示板と爆弾を結んでいる複数の線から、1本の青い線を引き抜くことにした。
いままで、ギリギリの状態に何度も遭遇し、その都度結果は成功してきた自分を信じることにした。
残り5秒のところで、僕は目をつむって伏せた状態で、思い切って青い線を引き抜いた。
辺りが静まりかえっていることに気が付いて、おそるおそる頭を持ち上げると、時刻の表示板は、残り1秒で止まっていた。
僕は、その場に仰向けになって倒れこんだ。
今回は、本当にギリギリで、危機一髪の状態だった。
少しすると、ベテラン刑事の織田さんが、僕の顔を覗き込んできた。
「若林、大丈夫か?」
「はい、生きてるみたいです。」
僕は、自然に自分の本心が口から出てしまった。
織田さんが僕に手を貸してくれて僕を起こした後、電話で連絡を取ってくれていた。
ぼくは、爆弾の時刻の表示板をじっと見つめていた。
あと1秒で、僕はこの世にいなかったかもしれないと思うと、背筋がぞっとする思いがした。
少しすると、爆弾処理班が現れて、織田さんと僕は、爆弾から遠くに離れるように指示された。
結果的に、爆弾は本物だったようだけれど、けが人もなく、この事件は一件落着となった。
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