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「彩乃くん!!」
殺人という人類最大の禁忌。
その呵責を振り払うためか、奇声を上げながら銃を構える男。
その腕に掴みかかろうとするも、まるで融解したかのように力の入らない下半身に邪魔をされ、その場に片膝をつく。
急速に忍び寄る惨劇の予感。
だがそれが覆されたのは、ほんの一瞬の出来事だった。
「・・五月蠅い(うるさい)。」
絶対零度の一言とともに翻った右足。
それは神速の一閃となって無防備なメンズシンボルへと吸い込まれる。
ズンッ!!!!
到底人体から発せられたとは思えない重低音と共に、悲鳴とも呻き声ともつかない声を上げる犯人。
と、私。
全く実害のない私の心と荒ぶる下半身をも震え上がらせた一撃は、《蹴る》ではなく《めり込む》という表現が正しい威力で男性特有の聖域を蹂躙し、破壊の限りを尽くす。
「く・・・ふぅ・・っ」
白目を剥き、声もなく崩れ落ちる男。
まるで映画のワンシーンを見ているかのようなスローモーションで倒れ伏した姿に一瞥をくれた麗しき修羅は、長く艶やかな黒髪を靡かせ、全てを吹っ切ったかのように颯爽と一歩を踏み出した。
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