第一章

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まずこの状況を打破するため、加速し続ける腹痛をどうにかしたい所ではある。 とはいえ、市販の整腸剤をものともしない暴れ龍を鎮める為の神アイテムなど、身の回りに常備しているはずがなく、その他に思い付く有効的な手段となれば、子供の頃、まことしやかに囁かれた 「つむじを押すと便秘だか下痢だかになる」 という、うろ覚えも甚だしい都市伝説程度のものだ。 たかだかつむじを押すくらいでこの災厄を止める事が出来るのなら喜んで実践もするが、万が一招く結果が《抑止》ではなく《推進》だったとしたら目も当てられない。 ほんの少し下向きに天秤が傾くだけで、私の人生史上最大最悪の惨劇が引き起こされるのは間違いないのだから。 「(リスキーだ・・。リスキーすぎる・・ッ!)」 つむじという、普段殆ど気に止める事もないパーツが持つ重みに、ゴクリと喉を鳴る。 自分にとって、そして彩乃くんにとっても命の瀬戸際である事は重々承知しているが、誰も何一つ得をしない自爆も避けたい。 ふうぅ・・と一つ長く息を吐きつつ自身の体と対話する。 そしてあと少しなら時間の猶予がある事を確かめた私は、縛られたままの右手を左の手首へとそっと差し伸ばした。
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