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「探偵事務所などという看板に隠れて、お前たちがおぞましい悪魔を召還しているのはわかっているのだ!!見るがいいこの部屋を!!不気味な祭器がひしめき合うこの部屋こそが、邪教の祭祀が執り行われている何よりの証ではないか!!」
銃を構えたまま、まるで自分の演説に陶酔しているかのように宣言する男の言葉を耳にしつつ、改めて事務所内を見回す。
確かにおよそ探偵が拠点にしているとは思えないアイテムが部屋の中には溢れかえっている。
私は民族的な仮面や骨とう品の蒐集が趣味なのだが、別室では収納しきれず、事務所内にもオブジェとして設置しているからだ。
まぁ確かに、虚ろな目をした仮面や用途の判別しない品々が並ぶ光景が、些か奇異に映る事は認めよう。
だが、個人のささやかな趣味を《悪魔崇拝》などと・・!!
ぐるるるる・・っ!!
腸内からも上がる抗議の声と共に、全く見当違いの誤解を解こうとした私の鼻先に、冷たい銃口が突きつけられる。
「・・悪を滅するのは、神の使徒たる我が使命。さぁ、大人しく正義の裁きを受けるがいい」
ちょっとイタいファンタジックな妄言を吐き出しつつ、何かに憑りつかれたように歪んだ笑みを浮かべる男。
・・ダメだ。
完全に違う世界にイッてしまっていらっしゃる。
だが正気を保っているかどうかは別として、引き金が引かれてしまえば全てが終わる事に変わりはない。
こんな理不尽な理由で命を絶たれるのはごめん被りたい。
さりとて仮に体調が万全だったとしても、この至近距離から発射される銃弾を回避する術はない。
どうする。
どうする。
どうする。
こんなギリギリの状況だというのに、内側から問答無用で突き上げてくる衝動に顔を顰めつつ、必死で策を模索する私の耳に、ゾッとするような低い声が割り込んだのはその時だった。
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