鈴の音

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あれほど苦しんでいた喘息がここへ来て、ぴたりと止んだ。 咳も頭痛もなくなった。 体が軽い。 「最近顔色いいね。身体の調子はどう?」 「……。すごく良くなった気がする」 突然移住してきた病弱な僕を心配して、君はよく声をかけてくれた。 「私のそばにいると、元気になるって、みんな言ってくれるんだ!」 さらりとした黒髪をキュッと束ね上げ、あどけない笑顔を僕に向ける。 「うん、確かに分かる気がする」 初めて会った時から、生命力溢れた彼女に惚れ込んでしまった。 当の本人は僕の気持ちなんて、知りもしないけれど……。 「あ、ちょっと聞いてよ! また今年も舞の役を押し付けられちゃった」 「舞の役……? 四月に祭りがあるんだっけ?」 この町では、神様に奉納する舞が伝わり、春になると祭りの場で披露される。
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