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そこには、僕が一番会いたかった人がいた。
軽く息を切らして、小さな紙袋を抱えている。
「もう寝ちゃってたかと思ってたけど、ギリギリセーフかな?」
「な、ん、で……?」
上手く言葉が出てこない。
「お祭りで配られるお餅とお菓子って、もらった? 祭りの話もしたいし、良かったら一緒に食べようと思って!」
口に紅を残し、肌の白さを際立たせた姿が近づいた瞬間、思わず腕で彼女を囲った。
紙袋がバスンと床に音を立てる。
えっ、と小さく彼女は呟いたが、逃げる素振りを見せない。
ぐっと腕の中にしまい込むと、砂糖菓子のような甘い香りに、体の芯が溶かされていく。
耳元で好きだ、と囁いた。
彼女の火照った耳、頬、潤んだ目から、相手の気持ちにやっと気が付けた。
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