10人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
あーあ、なんで私は、こんなことすら素直に言えないんだろう。そりゃ私じゃダメだろうな。こんな可愛くない奴なんて。
ふん、と。鼻でわらったつもりだった。それなのに地面に落ちたのは大粒の涙で、驚いて慌てて手のひらで拭う。
拭っても拭っても止まらない。暴れて引き攣る心臓を強く押さえる。綺麗にアイロンをかけたシャツの胸元に皺が寄る。
苦しい。辛い。痛い、痛い──痛い!
もう、限界だ。心が悲鳴をあげている。
やめてくれと。これ以上おさえつけられたなら壊れてしまうと。
どれだけ理屈を並べても、どれだけ気持ちを押さえつけても、もう自分を納得させられなくなり始めていて。
「……ねぇ、“海ちゃん”」
無意識に紡いだ、幼い頃の呼び名。
「いちごオレ好きだったのって、さ。海ちゃんのほうだったんだよ」
指先でつつけば、ピンク色の紙パックは呆気なく倒れた。
「だから、私は」
これを、すきになったのに。
「……ねぇ、もう覚えてないの?何も?もう、私との思い出は心には残ってない……?」
ただひたすらに、痛い。
この関係を断ち切る勇気は私には無いけれど。正直な私の心は違うから。
いつか私は、きっときみに伝えてしまう。
最近、思うの。きみは一体どんな顔して断るんだろう、って。
すっかりぬるまったいちごオレを嚥下する度、次から次へと涙が溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!