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3、まいにち
「モル、反対だ、それ掘れ掘れ」
ザクザク
「おお、そこだそこだ」
ザッザッ
「ああ、逃げた逃げた」
えー?
「…お前ら、いい加減にしやがれ」
キングスはイライラしていた。今は畑を耕している。魔狼は犬で、モルは人の擬態で手伝って草ひきや余計な石を除去していた筈だった。
そう、途中まではきちんと手伝えていた。
魔狼はしまった、という感じで牙を見せる。
「あ…ああ悪い、獣の血が騒いでな、つい。モルが楽しそうで付き合ってしまった」
「モルの守りしてんだろうがクソ犬」
怒らなくていいのに。俺が土竜見つけてテンションあがって必死に穴掘って。何で追いかけたんだろ…。
あれえ?最近こんなの多いな。
あれから平和に森でまた十年以上は経った。
キングスは討伐傭兵を引退した。多分五十半ば。畑仕事に開拓や町に行って剣術指南をしている。森の木も材木で持って行かれるから植林も始めた。
俺は体長一メートルには届かないけど少しずつ育っている。今は人に擬態したら十歳以上には見えるようになった。人の形で手伝っていても、さっきみたいにきまって横道に逸れるから怒られる。
やっぱり俺は魔物という事だ。
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