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ルイが俺を包んだハンカチだった。
覚えてるかな。
暗いけど見えてる?
アイリは覚えていた。くしゃっと握り涙ぐむのが、ろうそくの光でもわかった。
「何故これを…」
俺をしっかり見たアイリ。また燃やすと言われるかも知れないけど、元の姿に戻る事にした。
拾われた時とは違うけど、真っ黒な伸びたゴムのような目だけがある影を好む獣の姿。幻影獣になった。
アイリは驚いて硬直してたけど俺をずっと見ていた。
次はアイリが泣いた日に居た中型犬の姿になった。
アイリが怖がらないように、前脚をゆっくり触手にして伸ばしてハンカチをつんつん引っ張った。
「お、おまえ、まさか、あの魔物なのか?…おっさん捨てなかったのか、は、ははは!」
アイリは笑った。
悲しい顔で笑ってへたりと座り込んだ。
「こっち来いよ魔物。言葉わかるか?」
俺は皆の悲しい切ない顔が嫌いだ。
俺は泣けないんだ。
俺は鳴けもしないんだ。
アイリに近づいて膝に頭をコツンと当てた。
そんな顔するなよ。
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