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「俺な、町で辛くなったんだ。知り合いが皆死んで、俺はなんで生きてるんだろうって。よくあるよな。少し町から離れたかった。でも今は何処行っても戦後っての変わらないからさ。ここ思い出してさ…」
膝の上に顎を載せて俺はじっとアイリを見ていた。
「お前、ずっとここにいたのか」
確実に理解してる自分って魔物なのに、言葉通じてるのも変だよなと思った。さりげなく肯定の意味もこめて目を閉じた。
少しでもアイリが寂しくなかったらいいかな。俺、正直寂しかったんだ。
キングス、帰るの遅すぎるよ。
早くモルって呼んで欲しいなあ。
「俺も少しここに居させてくれ」
フッと笑って、アイリは犬の俺を撫でた。
「お前凄えな。完全感触が犬だな」
少し感心して俺をぎゅうと抱きしめた。
キングスのベッドはさすがに使えずソファーでアイリは寝てた。必ずといっていい程夜はうなされていた。
現代日本人だった俺でも知ってるよ。PTSDってやつだろ。
狭いソファーで犬の俺も寄り添って寝る事にした。悪夢なのか飛び起きたら俺を探しては見つけてホッとする。それから、ぎゅっと抱えて寝るようになった。
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