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俺は誰もいない家の中が怖くなった。
嵐だろうと暑かろうと外で過ごすようになった。
元々は感覚も無い魔獣なんだからこれでいいと思う。
中身は人間だったけど物欲があった訳でも無い。でも、もう今世で気になる物はこの家だけだった。だからなのか家からは離れられなかった。
あとは、この首輪のタグの組紐がいつか切れたら失くすんじゃないかと不安になった。
外して何処かに仕舞ったらいいとも思ったけど、それも嫌だった。離したくなかった。
手で触って確認出来るし紐に余裕が出来てタグが観れる。それだけで、もう人の形以外の擬態になる気も無くなった。
あれ?これって俺も病んでる?
人の形で魔獣だけど変に知能あるから、どうしたらいいかわからなくなった。
新天地?魔獣も縄張りあるって知ってる。弱い獣の俺には無理だ。
人の町?喋れないし擬態だし補食なんて見られたらもう。とけ込めないなあ。
ここに居るのが一番安全だと思った。
生まれたこの地で人間に擬態して、生まれたままの姿で毎日ボーッとして過ごす。
触手が伸びるから落ち葉を適当に捕食したり、小川も目の前だし生命維持は出来た。
たまに人だった前世を思い出した。
魔物より全然よかったんだなあ。
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