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穏やかな日が続いてる。
「ほら、取ってこいモル!」
投げられた枝を、追いかけてはくわえてキングスに返しに行く。お座りしてポトリと枝を転がす。犬の遊びってやつだ。おっさんが張り切るし俺が従順で楽しそうだから、黒犬のまま付き合ってあげてる。
俺はそろそろ飽きたぞ。驚かしてやるか。
「よし、もう一回な」
ぶんっと投げた枝をジャンプしてくわえ、ダッシュで持ち帰り先のキングスに向かって走った。
「え、ええ?モルッ?」
ドンッ!
手前で速度を落とし座る位置なのに、速度はそのまま一瞬で人の形になってキングスに激突してやった。立ったままのキングスと正面衝突だ。俺は体積不足なんだろうな、おっさんは微動だにしなかった。
「は、ははは!」
驚くには驚いたようだけど、何だか喜んでるみたいなんですが?
見上げると同時に、ひょいっと抱っこされた。
人の形の俺は少年だった。一番慣れ親しんだ前世の十八歳くらいのはず。異世界では成人だと思うんですが。体積不足で身長も体重も足りなかったようです。差し引き十五歳以下。駄目駄目じゃないか俺。しかも口に枝をくわえたままだったから、キングスは笑いながらそれを取った。
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