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帰宅したときテーブルに飾ってた写真も俺がしたって知ってたし。片付けや掃除してたってアイリがチクってた。なんか腹立ったから、写真の女の人に擬態したらこっぴどく泣きながら怒られた。余りの剣幕に恐ろしくなって数日影の中に引きこもったら、それはそれで終いには泣きながら出て来いと怒り出した。
なんなの、おっさん。
ドンドン!
「お邪魔するぞー!」
「アイリ、早すぎるだろ。これから飯作るんだ」
「いやあ、いい肴と酒が入ったから」
「おっ、いいねえ!」
これこれと、ビンを掲げて見せるアイリ。
いそいそとグラスを出し始めたキングス。
ニヤニヤと酒をくみ出すアイリ。
あ、これ御飯作らずに飲み始めるやつだ!駄目駄目!飲み過ぎるんだから!
俺は効果テキメンな人の形に擬態し直して、キッチンの台をバンバン叩いた。
「ひっ、ル、ルイ?!」
「な、モル、それは駄目だろ!コラコラ!!」
アイリはいい歳して、うわーと泣き出した。この間酒癖の悪さを生前の彼女ルイに怒られるのは怖かったって聞いたから。
亡くなった人に擬態するのは悪い事だと怒ったキングスは、俺を捕まえようと険しい顔して向かってきたから走って逃げた。
酒をちみちみ飲みながら彼女を思い出し泣きまくるアイリ。
彼シャツの少年を狭い室内で怖い顔して追いかけ回すマッチョ中年のキングス。
時折つるりんこな股間もお尻も見えながらバタバタ右往左往する擬態した魔獣の俺。
見た感じ部屋の中はカオスだった。
俺、魔獣でも人と楽しく生きてる。
時間は穏やかに流れてた。
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