閑話 あこがれ

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「よし、モル、次そこのヤツな!」 「その石はここで頼むよ」 俺は指示通り触手で丸太や石を持ち上げては、おっさん達に渡す。 体長は一メートル弱で体積は軽いが、そこは魔物。腕力魔力がそれなりにあったようで、幻影獣の姿で肉体労働に使われている。 「おお?いい感じだなあ!」 「これは楽しみっすね!」 最近噴火した山の麓の森だけあって川の一部に温水が湧き出した。戦後放浪迷子のキングスは温泉を知り、これはいけるだろと温泉作りを始めたのだ。 キングスとアイリは飲み仲間で仲がいい。戦後からは馬鹿やっては楽しむ悪友のようだった。二人が揃うと見てて楽しくて気に入っている。 「モル、いいか、小川からこうな、こうして繋げて溝掘ってくんねえかな。わかるか?」 「キングス違うって、底に小石敷くとかしないと無理だろ、ここはこうでな、」 結局どうするの? 簡易設計図を触手でつんつんして瞬きする俺。 思考は有るんだけど、獣だけあって人よりは少し短絡的で頭悪い気がする。困る事は無いけどね。 ズルズルと引きずられ、ココ掘れわんわんの指示がでる。はいはいやりますよ。 「で、できたー!」 「おおぉぉ!こりゃあいいぜ!」 三十路と四十半ばのおっさん達はババッと全裸になった。 「モルも入るかあ?」 「魔物って湯大丈夫なんか?」 「さあな、雪も雨も気にしてないからいけんじゃねえの?」 「へえ?」
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